電子書籍フォーマットには、epub以外にも著名なものがあります。
おそらく最も親しまれているものの一つはPDF (Portable Document Format)でしょう。Adobeによって開発されたフォーマットで、世界的に普及し、それを読み書きできる環境はだれにとっても身近に供給されています。また、紙の書籍や文書ともきわめて整合的で、PDFフォ^マットの文書を紙に印刷したり、紙に印刷されたものをPDFフォーマットにそのまま再現したりすることもできます。
PDFがそれでも電子書籍の主流フォーマットになりきれないのは、逆に、この紙の文書、ほんとの対応の良さかもしれません。すなわち、PDFは、いったん組まれたら、それを読むデバイスに会わせて柔軟に表現様式を変えることができないところにあります。そのために、ある文書が、小さなデバイスでは、小さく表示されてしまったり、部分的にしか表示されなかったりしてしまいます。
このようなPDFのフォーマットの固定性は、PDFが多様な表示デバイスでも一様に、同じ様式で表現されることに強くこだわってきたからです。それが、まさに、PDFの強みだったのです。また、それにともなって、PDFの内部使用はとてもデリケートで、ふくざつになり、表現を変えることが困難になって位待ったのです。現在のように多様な表現デバイスがあらわれた中では、そうした固定性は融通のなさになってしまいました。
それとは逆に、電子書籍として柔軟なフォーマットをもち、日本語的な縦書きにも対応しているフォーマットとして、シャープが開発したXMDFフォーマットがあります。XMDFフォーマットはすでに使用されてから十年以上の歴史を持ち電子書籍端末で使われてきました。
このXMDFフォーマットが一般に使いにくいのは、そのフォーマットを使用するためには、シャープとのライセンス契約が必要なことです。
他にも、VOIGERによって開発された .book フォーマットも同じようにライセンス契約が求められます。
これに対して、epubは、idpf(w3c)によって開発され公開されているオープンの電子書籍フォーマットで、誰もが自由に使うことができ、表現の柔軟性、あるいはepub3からは日本語特有の縦書きなどの機能ももっています。この自由さと柔軟さによって、epubが世界標準として大きな存在化をもつようになり、日本においても、iPad, iPhone, Kobo, Sony Reader, Kindle(変換が必要)など、主要な電子書籍のほとんどの端末がこれを表示可能にし、また、こうした電子書籍端末上の電子書店、電子書籍取り次ぎが、epubフォーマットを受け入れるようになってきました。(Kindleについては、epubをKindle用のmobiフォーマットに変換するツールが提供されている)
本書も、これらの理由から、epubをフォーマットとして採用しています。いったん、epubフォーマットで作成された電子書籍は、パソコンでもタブレット端末で、スマートフォンでも表示することができるのです。